創立記念日を迎えるにあたり
  「知の明治維新:夢・希望・勇気」
 
 
   平成20年10月30日
   専修大学松戸中学高等学校 校長 松本英夫
 


相馬永胤
コロンビア大学ロースクール、エール大学大学院で法律学・経済学を学ぶ。専修大学初代学長。

田尻稲次郎
エール大学、エール大学大学院で経済学・財政学学ぶ。 

目賀田種太郎
ハーバード大学ロースクールで国法学、国際公法を学ぶ。 

駒井重格
ラトガース大学で経済学を学ぶ。

  今年、中学校は9回目、高校は50回目の創立記念日を迎えました。
  親大学の専修大学は明治の初めに選ばれて米国に留学した若き先駆者相馬永胤・目賀田種太郎・田尻稲次郎・駒井重格の4名が、自らが習得した近代日本国家に必要な法律学や経済学などの学問を日本の若者たちに教授することにより、国家社会の恩に報いたいと考え、明治13年(1880)9月16日に、当時としては画期的な専修学校を創立したことに始まります。
 以来、専修大学は「社会に対する『報恩奉仕』」を建学の精神として据え、創立者の建学の理念に帰って、21世紀の教育理念として「『社会知性』の開発」を掲げて、独自性の高い教育活動を推進してきました。専修大学の創立記念日は9月16日ですが、大正11年(1922)10月30日に相馬永胤、田尻稲次郎の両先生の長年の教育活動が国から高く評価され、当時の森有礼文部大臣より特別教育功労者として表彰を受けられたこと、さらに同年5月、大学令によって専修大学が私立大学として認可されたことも考慮して、10月30日を「大学記念日」としました。本校は開校以来、この「大学記念日」を創立記念日として定め、この日を祝して学校を休業日とし、往事を偲びながら将来に思いを馳せる日としてきました。
 高等学校は昭和34年、専修大学の当時の総長川島正次郎先生が中心となって創立されましたので、大学と同様「社会に対する『報恩奉仕』」を建学の精神とし、既に2万3千人を越える卒業生がそれぞれの道で活躍する、千葉県でも有数の進学校となりました。
 また、平成12年(2000)4月に中学校も開校され、既に3期生を送り出し、千葉県初め近隣地域より高い評価を受けています。
 さて、今年の創立記念日10月30日に直木賞作家志茂田景樹氏によって、創立者4名をモデルにした明治青春小説ともいうべき『蒼翼の獅子たち』が河出書房新社より出版されました。
 米国留学中の4名の運命的な出会いと終生の絆の中からどんな気持ちで専修学校を創立したかが、大変興味深く書かれた小説です。
 4名の創立者の足跡をアメリカで取材した志茂田景樹氏も「あとがき」にこの小説への思いを熱く語っています。そこで、4名の創立者への皆さんの理解の一助にしてもらうために、この「あとがき」からすこし引用してみます。

  「彼らはアメリカの最高学府の教育を受けるには語学力はもとより、基礎学力も充分とは言えず、わが身をほとんど白紙状態においての渡米でした。風俗習慣の差に途方に暮れ、価値観のちがいに混乱する日々も、思いのほか長く続いたのです。
 しかし、彼らはくじけることがありませんでした。西洋の最新の知識を心おきなく存分に吸収して帰国し、日本の近代化の礎になりたいという強い志があったためでした。
 この志は、当時、欧米に渡った年若き留学生たちのすべてに共通するものでした。とりわけ、渡米中に日本人と日本語による法律、経済の専修学校を創ろうという具体的な夢を描くにいたった相馬、目賀田、田尻、駒井の四人にとっては、大きな希望と不退転の勇気を約束してくれるものになりました。(中略)
 彼らはそれぞれの立場で幕末維新の激動に背を向けることなく、敢然と受けとめながら成長しました。彼らにとって明治維新は、無限の可能性を秘めているものであっても、旧来のものがことごとく一掃されて見渡すかぎりの不毛の土壌に見えたことでしょう。
 彼らの先輩たちがなしとげたのは、武力にものを言わせた武の明治維新でした。それは旧来のものを一掃する作業にたとえることができます。
 その見渡すかぎりの不毛の土壌を肥やし、種を蒔き、芽を育て、豊かな大地にするにはもう一つの明治維新、つまり〈知の明治維新〉が必要でした。
 彼らは自分たちこそその担い手になろう、と夢、希望、勇気を糧に蒼翼の獅子と化し、太平洋の空を翔けてアメリカに渡り、そして、背にありあまる知の収穫を乗せて翔けもどってきたのでした。」

  当時の状況や彼ら4名の熱い思いの一端がこの引用文からも読みとれたのではないでしょうか。この『蒼翼の獅子たち』は学校でも図書館に入れる予定です。専修大学松戸生全員に読んで欲しいと思っています。
 この10月30日の創立記念日が、創立者の理念に立ち帰って、「夢・希望・勇気」を胸にさらに高い目標へ飛翔しようとする決意の日であって欲しいと心より願っています。